コロナバ禍詰将棋作家のひとり言

一時的に新型コロナウイルスの事はがり書きます。

詰パラ2016・11月号結果稿で感心した作品

詰パラ2016・11月号結果稿で感心した作品】

★まず、今月の詰パラ結果稿全校で最高得点は大学院③三輪勝昭作である。
これは言ってみただけである(笑)。

☆短大⑩鈴川優希作と大学④小林尚樹作は、奇しくも同じ2.71でこの2作は感心した。
得点に関しては、難しいのが損している感じである。
もし、解こうとしたが作意迄到達出来なかった人も再投票出来るシステムがあれば、2.8後半の価値はあると思う。

★短大⑩鈴川優希作は序盤10手を省き最後22香成迄が素材である。
このメイン手順がシンプルな形と変化で出来ているので、これだけでも十分作品に成り得る。
これからどうするかは作家の個性である。
僕は舞台装置は初めからなく、最後にはその舞台装置が消えるのが非常に好きである。
パズル性を重視する作家はそうはしないだろうが、この点は僕は鈴川君と共通するところがある。
29香の遠打を成立させる61角・14桂は逆算で発生させて、最後には両方消す。これは作者の意思で創られたものだ。
特に61角を初手で打ち、最後に捨てる構成は素晴らしい。
僕は常々狙いを生かすには構成が大事と言っているが、これには作者の主張が感じられる。

解説の作者の言葉では、初形と最終手前の対比が狙いとあるが、これは狙いとしての価値はゼロである。
対比を狙いとするなら
①42金がなくなる。
②22成香が発生する。
二つの異質な詰方の有利な条件になっている。
これは一つか、二つだとしても同質でなければ、対比の面白さにはならないのである。
狙いは29香~34桂の手順であり、鈴川君の言う狙いは表現方法と言うべきだと思う。
これは言葉の使い方にケチを付けただけで、感心した作品で高く評価しているのである。

☆大学④小林尚樹作は変化手順の解説がなされていない。
初手63歩では同玉で93の馬が通ってないから詰まず、84桂を73歩にする必要がある。
その73歩に同玉は82馬、同金、85桂で詰むから各自が勝手に研究しろと言う事なのか。
と解説を批判しているようだが、変化手順を羅列しても作品の良さは伝わらない。
理屈を伝えて細かい変化は、各自で研究させる解説方法は有効だと、僕は前々から思っている。

84桂を73歩に打ち替えると初形から64成銀が63成銀に出来るが、今度は73歩の形は詰まない。
前の84桂なら62金~85桂が82飛の利きがなく詰む。これは解説にも書かれている、巧妙で簡明な変化だ。
で、61玉に変化するのだが、62歩に同玉は簡単なので同成銀、そこから成銀翻弄が面白いが、64同成銀の局面は初形から62玉が61玉になっただけなのである。
これは前鈴川作と違い、局面対比を狙いとした作品になっている。
そこまで至る手順は、ある結果を得るために、一旦逆効果の形にする秘術を尽くした、素晴らしい手順である。
そして思い通りの形にした後の打開策が、わざと逆王手をかけさせる面白さに、角を捨てて最短のまとめで素晴らしい作品になっている。

この作品の序4手はその後の手順が出来てから思い付いたのであろう。
こうなれば更に面白くなるとは、そこそこの作家なら思いつかなくてはならない手順でもある。
55と、15歩、66との配置は最初からこの配置なら、逆算で入れた事になるが、これは72桂成、同玉、73歩、62玉を入れるために考えたと創作方法を推察出来る。
それを成立させる配置の55と、15歩、66との配置は以下の31手を創るより苦労したと僕は思える。
実は僕はこの3枚で別の配置がないか考えてみた。
配置に不満はないが、変化はもっと簡明な方がよいと思ったからである。それは配置枚数は増えても、簡明な方が良いと思ったのである。
考えてみた結果それは簡単ではなかった。
4手目同玉の変化を詰むようにするのがネックなのだ。
55と、15歩、66とがない状態で、これを詰むようにするのは、詰方に有利な駒を置く事になる。
これで以下の手順を成立させるのは、簡単な変化どこらか成立させるだけでも大変なのが、僕はよく分かった。
この3枚で収まったのは奇跡的である。
これは小林さんが創ったのではなく、運だと言いたいくらいである(笑)。
兎に角、そのくらい素晴らしいと感じた作品であった。