コロナバ禍詰将棋作家のひとり言

一時的に新型コロナウイルスの事はがり書きます。

最終手余詰

【最終手余詰】

詰将棋は最終手余詰は不問と言われている。
言われていたと言うべきかも知れない。
現在、最終手余詰は不問に異を唱える作家は多い。
僕も最終手と言え余詰は余詰だと思っている。

☆基本形21玉に詰方23金する。
①詰方34桂。
最終手は22金と22桂成が成立する。
非限定である。非限定は道中でもキズで通用する。
最終手と言え非限定は非限定と僕は考えるが、不問でも構わない。
この不問で構わないと言い方は、解答者はちょっと気になる人がいても仕方ないが、作者は気にしなくても構わないと言う意味。
勿論、内容を落とさず非限定にならない方法はないかは、考えなくてはいけない。

②持駒 金。
22金打と32金、11玉、22金が成立する。
迂回手順である。これも道中ならキズで通用する。
最終手と言え迂回手順は迂回手順と僕は考えるが、これも不問で構わない。

③詰方33金。
これは非限定と迂回手順の両方発生である。
なので倍、気になるが、不問で構わない。

④詰方33金、玉方32歩。
32金~22金とすると駒が余る。
僕は最終手と言え、駒が余る手順があるなら、余詰だと考えている。
現在はこう考える作家が増えているように感じている。

⑤詰方33金、玉方11歩、32歩。
これは同手数で駒余りの手があるので、変化になる。
これを22金迄の手順を作意に設定するのは、不完全作になる。

★さて、これで言うべき事を言ったのでこれで終りと思いきや、これからが本題である。

詰パラ1981・6短編競作展優勝作 鶴田康夫作。
持駒 飛
玉方 65馬、66歩、86玉、87歩
詰方 67龍、73馬、98香以上11手詰。

[作意] 83飛、84香合、同飛成、85金合、同龍、 同玉、86香、同玉、64馬、同馬、76金迄11手詰。

優勝も当然と思える素晴らしい作品である。
詰将棋が初めての人に見せるのであれば、僕の作品だと言うところである(笑)。

最終手は76金だが、66龍、85玉、84金以下も詰みである。
僕はこれは余詰だと思っている。
だが幸か不幸かこれがあるから不完全作ではない。
初手82飛の余詰が発見されているからである。
82飛(81飛)、85金合、95馬、75玉でここから危険な筋は85飛成、64玉、65龍、同玉、76角、55玉、73馬。
85飛成に変え、85馬、64玉、62飛成、55玉に
65龍と57龍(53龍)と他に45金~65龍がある。
これは検討しなくて良い。
詰将棋には「大駒3枚余詰あり」と言う格言がある。
これは大駒3枚で追われると、守備駒がいなければ、どんなに広くても捕まってしまうから出来た格言である。
大駒3枚が急所から外れていたら広さで逃れれる気がするが、実際には捕まってしまう。
だから、この局面になれば格言を信じて、検討しなくても良い。………な分けはない。
検討しなくてはいけないのではあるが、検討しても結果は同じ。
この格言にはまって助かった人はいないのである。

角さんの研究によると、82飛(81飛)の余地を残す余詰防止は玉方51としかないらしい。
だがそれは最終手余詰の66龍がある。
なので追加1枚による修正は、玉方82桂(詰方82歩も可だが82桂の方が良いだろう)しかないようだ。
それだとわざわざ馬の利きに打つ83飛の味が落ちる。
なのでもう1枚置いて82飛の余地を残すとどうなるか。
まず玉方81桂。これで最終手余詰と85飛成~65龍~73馬の筋が消える。
後1枚は玉方72歩くらいで良いだろう。
この72歩・81桂の形は82飛の手はかなり味悪である。これでは直接82飛と打てなくしているのと変わらない。
なら72歩は詰方62歩の方がましか?
他に方法はあるが決定版と言える形はない。
作者自身もここまでの結論は出しているかも知れない。

☆82飛の余地を残すか残さないか、どちらにするかは作者次第。
角さんが作者とコンタクトを試みると思う。
作者自身が修正図を発表して欲しいと願う作品である。

作者の気性

詰パラ2016・8月号デパート④の久保紀貴作だけど、僕は詰方63歩は玉方64とにするね。
配置的には詰方63歩が優れる。
だが玉方64とにすると……良い事は何一つない。
しかも検討もしていない。
これは言いたい事を説明するのに丁度良いので、使わせてもらったのである。

☆僕は詰方の駒が増えるのを極端に嫌う性格なのである。
詰方の利きを玉方壁駒にすると、変化紛れに関係するなら、勿論それは優先して考える。が、内容が同じなら、詰方駒1枚減らせるなら、玉方2枚増える方を選ぶ。
玉方3・4枚増えてもそうするかも知れない。
この作品なら、詰方63歩が玉方77となら流石にしない。
まあ、65とくらいなら玉方を選択するだろう。
これほど詰方駒が増えるのを嫌うのは気性であろう。

★このデパート④久保作であるが、単純な邪魔駒消去じゃなく、消し方にキーポイントがある。
この創り方はいかにも久保さんらしいセンスである。
年間デパート優秀作の候補だと思うくらいの作品である。
大変良い作品なので、久保さんには今から受賞の言葉を考えておく事をお勧めしたい。
これを捕らぬ狸の皮算用と言うのである(笑)。

詰パラ2016・8月号結果稿[デパート]

詰パラ2016・8月号結果稿デパート】

⑤の菅野さんの煙詰を柿木にかけたら瞬時に解いて来た。
ほぼ0秒。恐ろしや。

③鈴川優希作。
この序は頂けないんだけど、駒取りをしないなら99玉88金型で89桂か歩を置く。
それ以外に逆算不能だと思うが、大学担当者の久保さんはどう改作したのだろう。
もし、駒取りなしの逆算だったら脱帽である。
駒取りをどこかでしたとしても、気の利いた逆算は僕には浮かばない。
鈴川氏はブログで公開するだろうから楽しみである。

作品には命がある

☆僕は詰将棋の作品は命があると思っている。
しかもこの命は永遠である。
たが、作者がこの命を殺す事がある。
余詰・不詰による不完全作にして発表する事である。
不完全作で発表する事は作品を殺している事になる。
これは過失殺作品罪として罰する法律が必要だ。
刑罰としてある年数以内に修正図を創らなくてはならないとする。
過失殺作品罪は犯罪なので、他人に修正図を作られても文句は言えない。この場合を補正図と言う事にしよう。
その補正図があっても、作者の修正図が優先される。
作者は補正図を参考にして、修正図を完成させても構わない。
ある年数以内に修正図を発表しない場合は実刑となる。
それはその作品の修正権がなくなるものである。
仮にその作品が何か1枚加えただけで完全作になるとする。その作品はそれで新作として発表出来るのである。
過失殺作品罪とはそのくらい罪が重いのである。
文中にある年数と書いたが、これは10年くらいが適切かなと思っている。

★これは法律にしたいくらいである。
とここまで書いて大問題があるのに気がついた。
過失殺作品罪とは非常に言い難いのである(笑)。

詰パラ2016・8月号結果稿[短大]

詰パラ2016・8月号結果稿】

[短大]
21=酒井博久作。
金を3枚重たく打って、後で全部捨てる。これは好み。
4手目以降は完全無変化なので、デパート向きと思うが。

22=三輪勝昭作。
この作品は半期賞候補である(笑)。
これは冗談のようで冗談でない。
今期は抜けた作品がなく、25作全部候補と言える。
ある意味では理想の選題である。
この作品であるが、46歩、55玉、66銀、46玉、57銀、55玉、46銀、同銀、66角、同香、85飛迄11手詰を素材として、古くから持っていた。
銀をもう2回くらい動かさないと作品にならないなと思っていたが、上手い方法がなくほかっておいた。
最近になって、銀が無理なら飛を動かせないかと浮かんだ。
割と巧い組合せになったと思う。

24=安田恒雄作。
解けず。龍の利きをどうやって外すのか分からなかったが、そうか取っちまうのか。
普通なら感心しないけど、この作品はこの逆算は成功している。

詰パラ2016・8月号結果稿[中学校・高校]

詰パラ2016・8月号結果稿】

[中学校]24=山崎詔三作。
前記事小学校編で書いたが、この作者は変化の作り方にセンスがある。
注目している作家である。

[高校]
21=武島広秋作。
この作者は論理性より詰将棋らしい味を重視する点で、僕が現在詰将棋作家でナンバーワンだと思っている。
なので、いつも作者補正加点の得点分として1.0引いているのである(笑)。
初手に限定打はもったいないとの評があるが、作者からすると最後に捨てる駒なので、初手遠打妙手の構成にしたいとこでもある。
解答者としては初手に現れない方が良いと思うのはもっともで、作者としては初手でこそと思うのももっともである。
そこで、逆算してみた。
んっ、これ逆算出来ないよ。
駒取りは不可とするなら36玉にして詰方25金を置くのが唯一のようだ。
この2手は加えて発表した方が得点は上がったと思う。
でも、作家としては入れない方が多数派だと思う。
ところで、32香は31香でも良いようだ。
どっちでも良いのだけど、作者としてはどちらかに決めないといけない。
これは何故32香にしたのだろうか?
配置のバランスだけを考えたら、僕は31香にしている。
武島氏は32香派なのだろうか?
32香とした場合、初手45と、36玉は詰む。
これ36玉でなく、25玉で詰まないのだ。これは一寸意外に思った。
だが31香にしてしまうと、平凡に36玉で詰まない。
これが32香にした理由だろうか?
ちょっと気になるところであった。

23=谷口 均作。
これこの形でしか成立しないのだろうかと感じる配置である。
「大駒3枚余詰あり」と言う格言みたいなものが詰将棋にはある。
これ誰が言い出したのだろうか。
大駒3枚あっても余詰の危険のない形には出来る。
意味ない格言だと思っている人が多い。
と言うか真意の知らない人が多いのが、僕には驚きでもある。
これは広いところに逃げても、大駒3枚で追われたら捕まってしまうと言う意味なのだ。
それが適用されるのがこの作品。
余詰筋は広さで逃れているのだが、広さだけでは大駒3枚の攻めは必ず捕まる。
何か置かなくてはならないが、その置き方が難しいのが「大駒3枚余詰あり」と言われる所以である。
だから、谷口氏を持ってしても、この未整理感漂う配置しかならないのであろう。
それともう一つ。
これは僕が作った格言だが「余詰筋が強力なほど紛れはなくなる」と言うのがある。
余詰筋が強力だと直接防御するしかなく、逆に紛れを残せないのである。
その典型がこの作品。
慣れた人には一目で解ける作品になってしまっている。
こう書くと、この作品を批判していると勘違いされるだろうが、実はこの作品は今年一番好きな作品である。
2.65の得点にガッカリしたので、その分析なのである。
僕は配置は必然性があれば、悪形は気にしない。
難易度は易しい事はむしろ歓迎である。
だが、もっと形が悪くなっても良いから紛れを持たすか、易しいなら配置に整理感があるかどちらかに寄せて欲しかったと思う作品である。
出来れば後者で。

詰パラ2016・8月号結果稿[小学校]

詰パラ2016・8月号結果稿】

[小学校]
21=山崎詔三作。
この人は変化を自分で考えていてセンスが良いと感じている。

23=三輪勝昭作。
この人は変化を自分で考えていてセンスが良いと感じている(笑)。
この収束3手のパターンは誰が最初だろうか?
担当者の水谷氏は短編コンクールにある。
鈴川氏も小学校に発表している。
僕の作品はこの角度にして、詰上がり大駒2枚なのが大きな主張である。
僕は大駒3枚の詰上がりは好きじゃないのである。
手順としては、歩頭の銀捨ての感触は抜群である。
だが配置の多さでかなり割引きされてしまっている。
作意に関係ない駒は15歩42香52桂64歩の4枚。
15歩は巧い配置なので良し。
42香は43龍の1手詰を阻止ために、何か1枚は必要であるが、42香52桂64歩はバランスが悪かったかも知れない。

24=武島広秋作。
よく出来た作品であるが得点ほど素晴らしい作品には思えない。大駒3枚の詰上がりだし。
僕の評価点は2.75である。
武島氏は有名作家には作者補正加点があると言っているが、僕は武島氏は+1.0で計算している。

25=堀内 真作。
担当者はなかなか作者の意図が伝わらずと書いているが、充分伝わっていると思う。
これが面白いかと言うと、僕は全く面白いとは感じない。
狙いそのものが充分反映された評価点だと思う。
ただ、これがメチャクチャ面白いと感じる人もいるはずである。
作品の発表価値と出題方法は評価したい。